フサイン氏死

フセインの死刑執行、住民虐殺「人道に対する罪」
12月30日14時46分配信 読売新聞

 【カイロ=長谷川由紀】イラク中部ドゥジャイルのイスラムシーア派住民148人を殺害した「人道に対する罪」で死刑が確定していた同国元大統領サダム・フセイン(69)に対し、絞首刑による死刑が30日午前6時(日本時間同日正午)ごろ執行された。

 同国国営テレビが伝えた。約30年にわたり同国を強権支配、2003年のイラク戦争で政権の座を追われた独裁者は、自国民の手で裁かれ、「罪人」として刑死した。

 マリキ政権は処刑で求心力回復を期待するが、旧政権残党などの報復攻撃が激化、治安がさらに悪化する懸念もある。

 フセインは、軍などのクーデターでバース党政権が誕生した翌年の1969年、最高意思決定機関「革命指導評議会」副議長に就任して実権を掌握し、79年に大統領に就任した。イラン・イラク戦争(80〜88年)やクウェート侵攻(90年)を指揮。国内では、政敵や反体制勢力を力で徹底排除・弾圧する恐怖政治を敷いた。米軍主導のイラク戦争で03年4月に政権は崩壊、同年12月、出身地のティクリート郊外の潜伏先で米軍に拘束された。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061230-00000002-yom-int

早い.まるで立直した後の尚男君の即自摸のようだ.そして牌を倒した後の尚男君の点数を数えるときの指の動きのようだ.まっじびびった.なんだか一抹の寂しさすら感じる.てか,フセイン氏はクルド人虐殺事件が最も批判されていると思っていたのだが,その件を闇に葬ってしまって良かったのだろうか?確かこの件はイラクアメリカとの協議の結果で,さらに虐殺に使用された化学兵器アメリカ・イギリスから流れたものであった.これらの事実を考えると,この死刑執行の早さには意図を感じて仕方が無い.

さらにアメリカの受け渡しはあれでいいのか?ジュネーブ諸条約の第二追加議定書によると捕虜の解放の際は安全を確保しなければならないので,在任時の敵対勢力による現政権(しかも死刑確定後)へ受け渡しを行うことは国際法違反の可能性もありそうだ.やるならおそらくこそっと逃がしてイラク現政府にもう一度捜索させるなどしなければならなかったんでは??この辺までは詳しく分からんけど.

アメリカがどうこうは置いといて,国内的にはシーア派スンナ派政権トップをぶち殺しただけにしか写らないだろう.したがって,大規模なテロ及び内戦状態に移行する可能性が示唆される.実際,すぐに起きた→シーア派都市で車爆弾テロ、30人死亡=元大統領死刑に反発か−イラク*1これはもうだめかもわからんね

極東国際軍事裁判と比較する右系の向きもいるだろうが,今回のものはあくまでイラク人が裁いたものであり(もろにアメリカが取り仕切っているのでバイアスはひどいものだが),一方,極東国際軍事裁判は占領軍が上層部を拘束した状態での「戦勝国諸国による」「事後法による」ものであり,そのひどさは段違いである.これと同一視しようとすることの方が東京裁判を見誤っている.比較するならばどちらかといえばチャウシェスクの時の形式的な軍事裁判であろう.チャウシェスクの大量虐殺事件が怪しいということも今回のものと似ている.とりあえず,今回の裁判が不正であるという主張はこれからもどんどん出てくると思われるので*2,かつて日本がやられたことにも世界の目が向けばいいのだけどね.




悪魔のダンス

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戦史に学ぶ勝利の追求―ナポレオンからサダム・フセインまで

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*1:シーア派都市で車爆弾テロ、30人死亡=元大統領死刑に反発か−イラク
12月30日18時0分配信 時事通信


 【カイロ30日時事】イラク中部のイスラムシーア派の宗教都市クーファの市場で30日、自動車爆弾が爆発、ロイター通信によると30人が死亡、45人が負傷した。
 爆発があった市場は、イスラム教の犠牲祭を前に買い物する人々で混雑していた。
 クーファは、シーア派強硬指導者ムクタダ・サドル師派の拠点の1つ。爆発はフセインイラク大統領の死刑が執行されてから数時間後に発生しており、これに反発した元大統領を支持するスンニ派武装勢力による犯行の可能性がある。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061230-00000063-jij-int

*2:疑問残るフセイン元大統領処刑=「米主導の裁判」の印象も
12月30日19時0分配信 時事通信


 【ワシントン30日時事】ブッシュ米政権の「不倶戴天(ふぐたいてん)の敵」だったフセインイラク大統領が30日、処刑された。イラク国内の司法手続きによる死刑執行とはいえ、「米主導の裁判」の印象は否めず、裁判の正当性など多くの疑問を残す結果となった。
 ブッシュ大統領は処刑後の声明で、「公正な裁判」を強調したが、裁判中にフセイン氏を「独裁者ではなかった」と述べた裁判長が更迭されるなど、裁判への政治介入が目立った。