とくに何もないので


修学旅行の夜、旅館の部屋で学生達が消灯時間までくつろいでいました。


トン


ドアをノックする音がしたので開けてみましたが外には誰もいません。
不思議に思ってドアを閉めましたが、さらに二、三回ノックは続きました。
これは霊だ…。誰もがそう確信しました。
そして一人が言い出しました。
「ねえ、霊と会話してみようよ」

全員が緊張した顔でドアを囲むように立っています。
一人目の生徒がドアの向こうに語りかけました。
「今からする質問に、ハイなら一回、イイエなら二回ノックして答えてください。いいですか?」


…トン


応じた…。一同の間に興奮と恐怖が入り混じった驚きが広がりました。
質問は一人一回、順番に生徒が前に進み出ます。
「あなたは男ですか?」トントン
「あなたはこの旅館で死んだのですか?」トン
「自殺ですか?」トントン
「あなたを殺したのは男ですか?」トン



次々と質問は進みます。やがて最後の生徒のばんになりました。


「あなたは、そこに何人いますか?」



ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン



ドアを叩き付ける音はいつまでも止まず、翌日見たドアの外側には無数の手形がびっちりとこびりついていました。