ゲーム怒られたから殺した

「隠れてゲーム、怒られた」=祖父殺害の高1、弁護士に−山口
8月23日22時1分配信 時事通信


 山口県上関町で無職男性(79)が殺害された事件で、殺人などの容疑で逮捕された孫で県立高校1年の男子生徒(16)が「隠れてゲームをしていたのを祖父に見つかって怒られ、(殺害の)一因になった」と話していることが23日、分かった。
 同日、田井正己弁護士が生徒が拘置されている県警平生署で初めて接見し、明らかにした。
 田井弁護士によると、生徒は今年、お年玉などで携帯型ゲーム機を購入。隠れて遊んでいたが、7月から8月にかけて数回、祖父に見つかって「続けると学校を辞めさせる」と怒られた。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070823-00000176-jij-soci


表面上は題の通りだろう.かといってこれでゲームの悪影響だのゲームごときでキレて人殺しする昨今の若者の異常などと結論付けるのはあまりに短絡的だと思う.例えば,これに対するあるyahoo!ブログにはこうあった:

ゲームを注意したら殺される時代

先日のブログにも書いたが、こういう輩こそ本当に生きていても世の為人の為にならないと言うのだ。
子供がゲームを長時間していたり、勉強を放って没頭していたら注意するのが当たり前だ。
それを野放しにしている親は子供がどうなっても良いと思っているだけだ。
説教したりするのが面倒なだけなのだ。
殺害された祖父は堂々と孫に説教をした。実に素晴らしい事だ。
しかし、その結果孫に殺害されたのだ。
逆恨みもはなはだしい。
悪い事をしているから注意されるのだ。
ゲームをしていたのが悪いのではない、ゲームばかりしていたのが悪いのだ。
こんな簡単な事を少しも考えずに殺害実行をする輩が生きていて何の為になる?
大至急、犯罪の厳罰化を実現し、死刑をもっと増やせば良いのである。
http://blogs.yahoo.co.jp/tokebig777/1252066.html

ある意味正しい.殺人には死刑でいいと思う.しかし今回の件はここまでその状況を頭ごなしに断定できるものなのだろうか?この祖父は既に報道されている通り*1,孫に医師になることを強要し,自宅に住まわせ,他者を引き合いに出して再三にわたり注意するような人であった.そのような抑圧された状況下ではその携帯ゲームだけが自身の自由を確認できるツールであった可能性もあり,それを奪われれば逆上することもありうる.本人も友人にそろそろ限界だと語っている*2.何でもできる余裕と自由のある我々には容易には想像できないケースなのではないかと思った.また,殺害後のキバ遠征行動や万引きなどから重大性の認識や遵法意識や想像力の欠如などが示唆され,やはり単純にゲームがどうの社会がどうのとくくっていい問題じゃないと思う.ゲーム注意は表面的なものであったに過ぎず,祖父と孫の間の認識の違いによる関係悪化や上述した精神性に加え環境等の外的要因も考慮する必要があるだろう.

このブログでは「ゲームをしていたのが悪いのではない、ゲームばかりしていたのが悪いのだ。」と断言しているが,ゲームばかりしていた証拠などこの元記事には無い.頻度に関する情報としては「7月から8月にかけて数回、祖父に見つかって怒られた」くらいか.これは多いのか少ないのか...観察回数からのみでは試行回数を推測することは難しい.さらに本文は「こんな簡単な事を少しも考えずに殺害実行をする輩が生きていて何の為になる?」と続いている.私は「罪の無い○○を殺され〜〜」などの表現を見るたびにいつも思うのだが,じゃあその人は何か罪があったら殺されてOKと考えているのだろうか?このコメントにも「こんな簡単な事を少しも考えずに」という枕が置かれているが,では熟考して殺したのならその人は生きてOKなのか.まあこんなのはレトリックの問題なのでいいか.この人の,家族がより子に関与すべきという考えには同意するが,人の社会的存在価値を基準に刑について論じるのは雑すぎていかがかと感じた.

*1:<山口祖父殺害>「勉強しろ」祖父が高1孫に再三叱責
8月23日11時6分配信 毎日新聞


 山口県上関町の無職男性(79)が殺害された事件で、殺人などの容疑で逮捕された孫の県立高校1年の少年(16)に対し、祖父が「もっと勉強しろ」とたびたび叱責(しっせき)していたことが県警平生署捜査本部の調べで分かった。2人の間の高校の成績などを巡るトラブルが事件の動機の背景となった可能性もあるとみて慎重に調べを進めている。
 捜査本部などによると、少年は19日午後8〜10時ごろ、祖父の頭部をバットで殴るなどして殺害したうえ、同じころ、祖母(76)についてもバットで殴り負傷させた疑い。22日、警視庁万世橋署から身柄を平生署に移送された。調べには素直に応じ、事件後の足取りなどについて話しているという。
 関係者から捜査本部が事情を聴いたところ、祖父は教育熱心で「孫は学年で15番以内の成績」とよく自慢していた。しかし時折、知り合いの成績優秀な子を引き合いに出しては少年に対し「もっと勉強しろ」などと口酸っぱく叱責していたという。
 関係者によると、少年の母親は広島県内で開業する歯科医で、父親も医師。両親が離婚後、今年4月から山口県内の県立高校に入学し、祖父母宅から通学していた。高校の説明では、少年は大学の医学部か歯学部志望で、学習面や生活面で特に問題はなかったという。

*2:友人に「そろそろ限界」=家庭の悩み打ち明ける−祖父殺害の高1・山口
8月22日18時3分配信 時事通信


 山口県上関町で無職男性(79)が殺害された事件で、殺人などの容疑で逮捕された孫で県立高校1年の男子生徒(16)が先月、親しい友人に家庭環境の悩みについて打ち明け、「そろそろ限界」などと話していたことが22日、分かった。
 県警平生署捜査本部もこうした事実を把握しており、祖父殺害の動機につながる可能性もあるとみて調べている。
 同級生の男子(15)によると、生徒は、けがや勉学に集中するためなどの理由で軟式野球部を退部する前の先月上旬、家庭でのトラブルについて打ち明けた上で、「そろそろ限界かな」と話した。「逃げる時は東京に行くかも」とも語り、同級生は「事件の前兆のようなものを感じた」という。