認知症

いまさらだが.2004年12月24日付けの厚生労働省の報告書で定められた.「痴呆」という言葉が差別的との理由.この件に関してはいくつか疑問点がある.

  1. 我々はこれに従う必要があるのか
  2. 痴呆は差別用語
  3. 認知症て名前自体が意味分からん

1について.
我々一般人はこれに従う必要は今のところ無いと思われる.厚労省の報告書や、老発第1224001号では,行政機関への協力や法令用語の改訂について言及しているだけであって,痴呆が使用不可になるわけではない.現に,医学用語としては痴呆は残る.したがって,痴呆という言葉を使ってはならない法的根拠は当然無く,認知症という言葉が嫌なら使わなくて結構である.

2について.
完全な言葉狩りである.とてもじゃないけれど痴呆が差別用語として消滅すべき言葉だとは思えない.この言葉は市民権を得ているだけである.したがって使用頻度が多いために,ネガティブに使われることも相対的に多いだけである.「痴呆の患者を診察する」とか言う場合に,どこに差別的な意図があるだろうか.いくら呼称を認知症に変えたとしても,「この認知症が!だから迷惑なんだよ!」とかいう文脈で使えば立派な差別である.言葉の意味は文脈でいくらでも変わる.見た目だけを変えても何も変わらない.

3について.
本当に迷惑する.ただでさえ,心理学=臨床心理学という一般認識があり,毎度毎度「いやね,そもそもブントが・・・」などと説明する気力も起きないというのに,こんな名前を付けられたんじゃ,我々認知心理学者は「認知症を研究する人たち」と思われても何もおかしくない.まじで困る.日本心理学会,日本基礎心理学会,日本認知科学会,日本認知心理学会が意見書を提出しているが,当然の行動だろう.アルコール依存症はアルコールに依存するからアルコール依存症である.蓄膿症は膿が溜まってしまうから蓄膿症である.じゃあ認知症は何?何でも認知してしまう症状?何それ?だいたい認知っていう言葉の意味すらも一般では定着していないのに(子供を認知するとかそういうときしか聞くことはあまり無い)...上記4学会は認知失調症を提案しているが,本当は痴呆症のままでいいと思う.