これもおもしろそう

ストレスと闘う遺伝子が幼児虐待で変化
Brian Handwerk
for National Geographic News
February 23, 2009

 幼少期に虐待を受けると、ストレスと闘う主要な遺伝子の機能が弱体化する可能性があるという研究が発表された。生涯を通じてストレスに弱くなる恐れも否定できない。

 この新たな研究では、幼少期に虐待経験がある自殺者とない自殺者、そして自殺以外の死者の三者間で脳の比較が行われた。

 カナダ東部モントリオールにあるマギル大学に在籍し、今回の研究を共同で行ったモシェ・スジフ氏は、「幼少時に虐待を受けると、そのしるしがゲノムに残るようだ」と話す。この発見は今週、「Nature Neuroscience」誌で発表された。

 私たちが両親から受け継ぐ遺伝子は、その機能発現を制御する化学物質(メチル基)によってしるしが付けられる。研究では、虐待の被害者のDNA自体に変化は認められなかったが、特定の遺伝子の発現が脆弱化し脳内の鎮静ホルモン分泌が抑えられていたのである。

 環境がこの種の影響力を持つという考え方は、エピジェネティクスという新しい研究分野の重要なポイントである。エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列変化を伴わない遺伝情報の変化を研究する学問である。「薬や毒などの化学物質ではなく社会環境が遺伝子の発現を変化させるという、非常に興味深い現象だ。この分野は生命現象の理解にますます重要となるだろう。」とスジフ氏は言う。

 アメリカ南東部ジョージア州アトランタのエモリー大学に在籍し、ハワード・ヒューズ医学研究所の研究者でもあるケリー・レスラー氏は、次のように説明している。「成人が患うあらゆる種類の精神疾患において、幼少期の虐待は最高レベルの危険因子であり、それらすべての精神疾患には遺伝的要因があることが判明している。そしていま、幼児虐待と遺伝的要因の相互関係が理解されつつある」。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=46943684&expand


レジリエンス研究の初期の主眼は幼児期の虐待などから立ち直っていく過程の解明だった.そして現に立ち直ってる人々は多数存在している.となると,幼児期に遺伝子の発現が抑制されるような影響を受けたとしても,それを改善することもできるのではないかと思われる.今回はネガティブな社会的要因でコーディングが影響を受けることが示されたが,逆にポジティブな社会的要因で回復力を復元することも可能だったりすれば面白い.ただし,それができるとしても幼児期じゃないと手遅れな気もするけど・・・とりあえずこの論文を読まないと話にならないな・・・